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熊本地震のお見舞いを申し上げます

小泉八雲熊本旧居

小泉八雲熊本旧居(2011年撮影)

熊本地震発生から1週間が経ちました。亡くなられた方の御冥福をお祈りしますとともに、被災された皆様には心からお見舞い申し上げます。

ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が松江から移り住んだ地・熊本には、ハーンが暮らした住居や、教壇に立った赤レンガの校舎が保存され、「九州の学生とともに(With Kyushu Students)」「停車場にて(At a Railway Station)」などゆかりの作品も数々あり、熊本八雲会、小泉八雲熊本旧居保存会、熊本アイルランド協会、熊本大学小泉八雲研究会など、私たちのお仲間も大勢いらっしゃいます。

幸いにしてご縁のある方々からは、ご無事とのお知らせが直接あるいは人づてにも相次いで届き、胸をなでおろしました。一方で、小泉八雲熊本旧居熊本大学五高記念館が被災したとの情報も伝わってきており、何かお力になれないだろうかとの話がここ松江でも出ているところです。

全国紙の島根版での地震報道には、松江在住のハーンの曾孫・小泉凡さんが登場しました。

八雲研究仲間を気遣う

八雲に関する著書がある同市の研究仲間、西川盛雄さんと連絡が取れ、「室内はめちゃくちゃだが、自分も家も無事」と聞いた。凡さんは「何か必要なものがありましたら、おっしゃってください」と告げた。
……
凡さんは「日本人が外来文化を受け入れやすいのは、自然災害が多く、変化に柔軟だからではないか」と指摘した八雲のエッセーを引き合いに出し、「日本中、いつどこで災害が起きるか分からないことを再認識した。今は、これ以上被害が拡大しないことを願っている」と話した。

島根)県内でも出雲などで震度2 県や県警が会議:朝日新聞デジタル

熊本は、松江から移り住んだ小泉八雲ゆかりの地でもある。
ひ孫で県立大学短期大学部教授の小泉凡さん(54)のところに、八雲の熊本旧居の外壁にひび割れが入ったと連絡があった。
凡さんは、被害を受けた熊本城の様子をテレビで見て、同じ城下町の住民としてショックを受けたという。「心のこもった手紙を送るなど、精神的な支援をしていきたい」

松江の小泉八雲旧居には、熊本旧居支援のために義援金箱が設置されました。松江の旧居にお出かけの際は、ご協力いただければ幸いです。私たちからもお願い申し上げます。


 

山陰中央新報: 八雲ゆかりの地を巡る怪談ツアー始まる

先日お伝えしましたNPO法人松江ツーリズム研究会が実施する新しいツアー「ちどり娘と行く八雲の“Kwaidan(怪談)”散歩」が4月1日(水)より始まりました。初日の模様を『山陰中央新報』が伝えています。

山陰中央新報 – 八雲ゆかりの地を巡る怪談ツアー始まる

下記リンク先よりチラシのPDFファイルをダウンロードすることができます。デザインは「松江ゴーストツアー」にひきつづき、石川陽春・八雲会常任理事が担当しています。

松江城ホームページ:観光チラシ・パンフレットのダウンロード

山陰中央新報: 小泉八雲ゆかりの地 予約制の新ツアー開始

松江市内のラフカディオ・ハーン(小泉八雲)ゆかりの地をめぐる「松江ゴーストツアー」を実施するNPO法人松江ツーリズム研究会が、ハーンにちなむ新しいツアー「八雲の“Kwaidan(怪談)”散歩」を4月1日より開始することを、『山陰中央新報』が伝えています。「松江ゴーストツアー」が夜間に実施するのに対して、「八雲の“Kwaidan(怪談)”散歩」は日中のツアー。「松江ゴーストツアー」でも訪ねる怪談スポットに加え、小泉八雲記念館と小泉八雲旧居も訪問。記事には、ガイドの練習をする「ちどり娘」の写真や、山本素久理事長(八雲会理事)のコメントなどが掲載されています。

山陰中央新報 – 小泉八雲ゆかりの地 予約制の新ツアー開始

【10/1記事追加】The Japan Times: Lafcadio Hearn: ‘Japanese Thru and Tru’ / Glimpses of Lafcadio Hearn’s Matsue

英字紙The Japan Timesに、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の記事2本が掲載されました。

『旅する帽子:小説ラフカディオ・ハーン』(講談社)、The Dream of Lafcadio Hearn(黒田藩プレス)の著者ロジャー・パルバース(Roger Pulvers)さんによる評伝。

Lafcadio Hearn: ‘Japanese Thru and Tru’

ハーンが愛した松江と、足をのばして足立美術館(島根県安来市)の日本庭園を訪ねる旅。

Glimpses of Lafcadio Hearn’s Matsue

【9/22記事追加】ロジャー・パルバースさんによる記事の増補改訂版。

The Life and Death of Lafcadio Hearn: A 110-year perspective :: JapanFocus

【10/1記事追加】

The Irish Today: 松江怪喜宴とアイリッシュパブトレインの総まとめ

7月26日(土)27日(日)の「松江怪喜宴」(「第2回松江怪談談義」「怪し会 in 松江」)と、そのプロモーションとして特製のヘッドマークが掲出された高松琴平電気鉄道(ことでん)での「アイリッシュパブトレイン」運行について、アイリッシュ・ネットワーク・ジャパンのブログに写真たっぷりのリポートが掲載されました。

「松江怪喜宴」のリポートには、小泉八雲記念館旧居、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の曾孫・小泉凡さんの研究室(島根県立大学短期大学部)への訪問、怪異蒐集家・木原浩勝さんの松江観光大使委嘱式、凡さんの新刊『怪談四代記:八雲のいたずら』(講談社)出版記念祝賀会の模様も収められています。

 

テノール歌手・経種廉彦さん死去、一人芝居オペラ「梅津忠右衛門伝」

松江市出身のテノール歌手・経種廉彦(いだね・やすひこ)さんが亡くなりました。経種さんは、1999年にラフカディオ・ハーン(小泉八雲)原作の一人芝居オペラ「梅津忠右衛門伝」を初演(松江市総合文化センター プラバホール)、翌2000年には、八雲会主催のハーン生誕150年記念ギリシャ親善訪問の旅に同行し、「梅津忠右衛門伝」を上演しました。謹んで御冥福をお祈りいたします。

 

山陰日本アイルランド協会: 小泉八雲旧居で楽しむ2台のアイリッシュハープによるコンサート「アイリッシュハープの残照」

4月24日「小泉八雲旧居で楽しむ2台のアイリッシュハープによるコンサート『アイリッシュハープの残照』」が、山陰日本アイルランド協会の主催で開催されました。

リハーサルの模様。

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【6/3記事追加】読売新聞: 名言巡礼 ラフカディオ・ハーン「草も木も、また岩も石も、まさに一切涅槃に入るべし」

読売新聞サイトの連載「名言巡礼」で、松江・出雲が取り上げられました。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)「日本の庭(“In a Japanese Garden”)」(『知られぬ日本の面影(日本瞥見記、Glimpses of Unfamiliar Japan)』所収)の

草も木も、また岩も石も、まさに一切涅槃(ねはん)に入るべし。
Verily, even plants and trees, rocks and stones, all shall enter into Nirvana.

という言葉とともに、ハーンゆかりの美保関、日御碕、小泉八雲記念館、「日本の庭」に書かれた小泉八雲旧居の映像が公開されています。

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平成24年度「小泉八雲をよむ」感想文、作詞・詩の表彰式を行いました

3月24日、平成24年度「小泉八雲をよむ」感想文、作詞・詩(主催:松江市、松江市教育委員会、八雲会)の表彰式を、松江城の堀に面する松江歴史館で開催しました。式典後は松江歴史館と、その近隣にある小泉八雲記念館と小泉八雲旧居へ受賞者とそのお連れのみなさまをご案内しました。

受賞者(前列)と審査員のみなさん。

松江歴史館の基本展示「八雲が愛した松江の世界」では、松江ゆかりの小泉八雲作品の朗読を聴いたり、松江の写真で構成された映像を見たりすることができる。

1990年の来日100年を記念して建てられた小泉八雲胸像前で、日野雅之・八雲会会長の解説。

小泉八雲旧居。八雲が熊本転勤までの約5ヶ月を過ごした旧松江藩士の屋敷。

最後に小泉八雲旧居の隣の小泉八雲記念館へ。『知られぬ日本の面影』をテーマにした写真展を開催中。ちょうど写真家の高嶋敏展さんが来館していて、急遽ギャラリートークに。

Googleマップのストリートビューで旅する小泉八雲ゆかりの地

Twitterでは5月にご紹介しましたが、八雲会のサイトではまだ取り上げていませんでしたので、遅ればせながらご案内します。

検索サイトで知られるGoogleが提供する無料地図サービス・Googleマップのストリートビューは、目の高さにあわせて撮影された360度のパノラマ写真を、パソコンなどの端末で操作で楽しめるサービスです。ぐるりと回転させるだけでなく、前後左右に歩みを進めたり、拡大・縮小したりして見ることもできます。このストリートビューに、島根県内の観光地が追加されました。

島根の観光地がGoogleマップのストリートビューSPコレクションに続々登場中!(しまねはじまり通り)

この中には、小泉八雲記念館、小泉八雲旧居など、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)ゆかりのスポットが多数含まれています。以下、まとめてご紹介します。これから出かける方は旅の計画に、以前出かけた方は思い出のよすがにお試しを。

小泉八雲記念館

小泉八雲旧居の西隣に、昭和8年(1933)11月29日開館。直筆原稿や初版本のほか、愛用の机・椅子・衣類などの遺愛品を中心に二百数十点を展示している。松江市伝統美観保存指定地区にあり、景観に配慮した建物になっている。向かいの塩見縄手広場には八雲の胸像がある。


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小泉八雲旧居

八雲は松江最後の5ヶ月間、旧松江藩士・根岸家の屋敷を借りて過ごした。根岸家の人々の尽力により、八雲が好んで眺め、「日本の庭」にあらわした庭園や建物が保存され、八雲が暮らした当時の様子をしのぶことができる。


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松江城

八雲は学生と天守閣に登り落日に照らされた宍道湖や、湖面に浮かぶ嫁ヶ島の優美さをめでた。天守閣のことは「大きな塔」と呼び、「大きな怪物を寄せ集めてつくった龍のようだ」と評している。また、自宅から通勤の近道として、松江城の二の丸、三の丸を毎朝通り抜けていた。


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普門院

八雲の怪談「小豆磨ぎ橋」に登場する。ある侍が普門院にかかる橋にまつわるタブーを破ったために奇怪な事件が起こるという物語である。明治24年(1891)5月26日、八雲は自宅に普門院の住職を招いて、島根県尋常中学校教頭の西田千太郎と三人で会食をし、この怪談について詳しく取材した。この時に八雲の心中には、日本の怪談を書く構想が次第に出来あがっていったようである。


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美保神社

八雲が三度滞在した港町・美保関の神社で、美穂津姫命と琴代主命を祭神とする。八雲は作品「美保関」に、“卵の嫌いな神様”であるという琴代主命の伝承を紹介している。国譲り神話にちなむ毎年4月7日の青柴垣(あおふしがき)神事や12月3日の諸手船(もろたぶね)神事でも知られる。


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熊野大社

出雲大社の新嘗祭で用いる火を鑽(ひき)きり出す火鑽臼と火鑽杵は、毎年同社から送り出される。八雲はピット・リヴァース博物館のタイラー館長の依頼に応じて、西田千太郎を介して出雲大社の千家尊紀宮司より火鑽臼と火鑽杵を入手し、明治24(1891)年4月21日に東京帝国大学のチェンバレン教授に送り、その後博物館に寄贈された。


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日御碕神社

美保神社、熊野大社と同じく『出雲国風土記』にも載る古い神社。その社殿は権現造の朱塗りで、内部は極彩色の装飾画で覆われている。祭神は天照大御神とその弟須佐之男命。八雲は1891年8月7日海路を使って訪れ、セツと参詣した。


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引用・参考文献
  • 小泉凡『八雲の足跡を訪ねて』八雲会、1987年
  • 小泉凡監修、八雲会編『へるんさんの松江まちあるきマップ』松江市観光振興部、2011年
  • 小泉八雲記念館企画展「『知られぬ日本の面影』への旅:高嶋敏展写真展」キャプション、2012年
  • ラフカディオ・ハーン著、村松真吾編訳『神々の国の旅案内 新装版(仮題)』八雲会、未刊行

【再掲】過去の雑誌記事で知る松江の魅力『松江特集』:高橋一清さんの講演会を前に

※本記事は、2011年3月24日に掲載した「過去の雑誌記事で知る松江の魅力『松江特集』」の再掲です。2012年7月15日の八雲会定期総会で、高橋一清さん(社団法人松江観光協会観光文化プロデューサー)を講師に迎えて記念講演会を開催するのを前に、高橋さんに触れた記事を改めてご紹介します。

松江観光協会編『松江特集』

Twitterでは折にふれてご紹介してきましたが、松江観光協会から『松江特集』という本が2月に発刊されました。この本は、全国や地方で過去に発売された雑誌に掲載された松江に関する特集記事5本を再録したもので、元『別册文藝春秋』編集長で、現在は松江観光協会の観光文化プロデューサーとして活躍する高橋一清さんが企画編集しました。

巻頭を飾るのは、戦後雑誌ジャーナリズムの歴史に名を刻む『暮しの手帖』第75号(1964年)より「水の町」。木造の黒瓦葺きの民家が立ち並び、行商のリヤカーや小さな汽船が行き交う、今日とは大きく異なる市街の情景を映し出す写真を添えて、高度経済成長期の昂揚感からやや距離を置いたかのような静謐な筆致で松江の姿が綴られています。「松江へ行くのなら、地図を一枚お持ちなさい。その地図をたよりに、なるたけ自分の足でお歩きなさい。まず千鳥城をみてから、濠端をぐるっと歩いてみる、気に入れば、そのへんの橋にもたれて休む、そんなふうに見てゆくと、しだいに、この町の、しずかで、つましく古風な美しさ、というものがしみとおってくる」。この記事書いた『暮しの手帖』初代編集長の花森安治は、旧制松江高校(現在の島根大学)を卒業した、松江ゆかりの名編集者です。

その花森安治が手がけた記事をガイドに、約40年後の松江を訪ねて書かれた記事が、『がんぼ』第9号(2005年)の「名編集者・花森安治が愛した 日本の原風景松江を歩く」です。高橋一清さんも記事中に登場して、花森安治と小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)との共通点を次のように指摘しています。「松江居住時の世代こそ違うけれど、神戸が、また日本の国が、失いかけているゆったりとした落ち着き、日本人ならではのたたずまい、それでいて新しいものを受け止めていく姿勢。彼らがそういったものを松江に見たのは確かでしょう。その後、ふたりともジャーナリストとして時代への批評、観察を行なっていきます」

『がんぼ』の記事中では、『暮しの手帖』記事の写真のうち、縁側でお茶を楽しむ人々の中に、松江市収入役や八雲会副会長を務めた漢東種一郎さんがいることを紹介しています。八雲会の長年にわたる会員には懐かしい名前です。

『西の旅』第17号(2008年)の「八雲でめぐる松江。」は、八雲の曾孫・小泉凡さん(島根県立大学短期大学部教授、八雲会名誉顧問)を案内役に、小泉八雲旧居、月照寺、神魂(かもす)神社など、松江市内の八雲ゆかり地を訪ねる記事です。八雲が好んだ味を再現した「ハーンの羊羹」(一力堂)の誕生秘話も登場しています。

その他、松江の古くからの商業地のガイドブック『白潟歴史と文化に出会える街歩きあんない』(2010年)と、市内に現存する古今の建築を特集した『湖都松江』第15号(2008年)の特集「未来に遺す『松江』」を採録。松江の旅案内やおみやげにもなりそうな1冊です。松江にお越しの際は、市内の書店や観光案内所などで手に取ってみて下さい。

社団法人松江観光協会編『松江特集』
社団法人松江観光協会刊
2011年
定価1,000円(税込)
お問い合わせ先:社団法人松江観光協会(電話0852-27-5843)
http://www.kankou-matsue.jp/

6月27日は小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の誕生日です

小泉八雲旧居(根岸邸)

今日6月27日は、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の誕生日です。

昨日から今日にかけて、松江城の北堀に面して今も武家の屋敷の家並みをとどめる塩見縄手では、「へるんさんバースデー・アニバーサリー」と銘打って、小泉八雲旧居向かいの空き店舗では、津波に関する特別展示、八雲の曾孫・小泉凡さんが先月東日本大震災の被災地に「みちのく八雲会」の皆さんを訪問した際の写真のパネル展示、軽食やラフカディオ珈琲の販売が行われ、近隣商店や施設でもサプライズなサービスが実施されています。そして小泉八雲旧居に西隣、小泉八雲記念館では昨日から「小泉八雲のKAWAIDAN展:翻訳本と映画の世界」が始まりました。

小泉時、小泉凡共編『増補新版 文学アルバム小泉八雲』(恒文社、2008)によると、八雲は41歳の誕生日の5日前、1891(明治24)年6月22日に、塩見縄手の根岸邸に、生涯の伴侶となる小泉セツとともに転居しています。念願であった武家の屋敷での暮らしを始めたばかりの八雲は、どのような思いで41歳の誕生日を迎えたのでしょうか。根岸邸の一部は現在、小泉八雲旧居として一般に公開されています。

梅雨は鬱陶しい季節と思いたくもなりますが、八雲のこの家での暮らしぶりをしのぶには、絶好の季節が始まったと言えるのかも知れません。

震災後のみちのくで:八雲曾孫・小泉凡さんの東日本大震災被災地リポート

5月、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の曾孫・小泉凡さん(島根県立大学短期大学部教授、八雲会名誉顧問)が、東日本大震災の被災地を訪問、仙台を拠点に活動する「みちのく八雲会」(門間光紀代表)のみなさんと面会しました。小泉凡さんからお寄せいただいたリポートを、以下に掲載します。

震災後のみちのくで

文:小泉凡

5月の連休に、震災後はじめて仙台と石巻を訪ね、お見舞いの気持ちを込めて「みちのく八雲会」の皆さんと懇談してきました。同時に4月以降に八雲会に寄せられた義捐金と松江市在住の会員からご提供いただいた、和菓子とコーヒーを持参し、大いに喜んでいただきました。

石巻イオンで、みちのく八雲会の会員の皆さんと。左から2番目が小泉凡さん。(石巻市)

石巻イオンで、みちのく八雲会の会員の皆さん。(石巻市)

5月4日は石巻へ。被害の少なかった郊外のショッピングセンター・イオンに門間代表を含め8名の会員の方が参集してくださいました。そのうち6名までは家も車も失われています。壮絶な非難体験談をうかがいました。以下に抜粋して紹介します。

「地震当日、石巻線の陸橋の上で吹雪の中、娘と手をつないで一夜を明かした。通りかかった鮮魚トラックが中身を捨てて、発泡スチロールで囲いをつくり仮設トイレを作ってくれた。」「べそをかきながら、夫と山路を避難した。姉の嫁ぎ先をめざしたが、暗くなってきて、心細くなり、まるで曽根崎心中だった。通りかかった車に手をあげると若い青年で、どこまででも送ってくれると親切だった。でも彼はガソリンも食料もほとんどなかったので地震直後にコンビニで買ったおにぎりをあげた。親切なコンビニの店員はその5分後に津波で流されたはず。そのことを思い出すと悲しい。」「私は昭和23年3月11日生まれ。夜には誕生日を祝ってもらうことになっていた。だから3月11日は私にとってリセットの日。」「嫌いだった人が死んでこんなに悲しい。生き方を変えなければと思った。」「近くの学校の3階に避難した。窓にSOS 1600人と書いた。自衛隊のヘリが降りてくれた。3日間食べ物がなかったが、女子高校生がお金を出し合ってお菓子を差し入れしてくれた。嬉しかった」。

心温まる美談もありました。「転居届を提出したわけでもないのに、自宅あての郵便物が、避難先の実家に届けられた。近所の人に訊いて届けてくれたのだろう。日本人は何と勤勉で親切!」「行政はとりあえず犠牲者の遺体を土葬して、後日あらためて火葬することに決定。棺を10体並べてまとめて供養する予定だったたが、若いお坊さんたちが、『それはない!短くても一人ずつお経を!とネットワークをつくって行政に陳情し、個人供養を実現させた』」「イギリスの支援チームに、皇太子の結婚式で帰らなくていいのですかと尋ねると『被災地支援の方がずっと大切だ』といわれ涙が出た」「瓦礫から掘り出された遺体の中に、赤ちゃんを抱きしめたままのお母さんがいた」。

ハーンの大雄寺の子育て幽霊譚の再話には、時空を超えたtruth(真理)が本当にあったのだと感じました。その後、2名の会員の方のご案内で被害の大きかった南浜地区へ。瓦礫の中に立つ廃墟のような小学校は真っ黒にコンクリートが焦げていました。津波で流された何台かの車が学校の前でぶつかりあって炎上し、火災が発生したのです。そこに近い墓地では9割型の墓碑が倒れていました。でもそれを起こして地蔵やこけしが奉納される風景がありました。祖先信仰の強さを感じるとともに、ハーンが「地震と国民性」で説いたように、この国には不変の安住地はないということを思い知らされました。

南浜の小学校。津波でぶつかりあった車が炎上し、学校が焼ける。(石巻市)

南浜の墓地。こけしを奉納する光景。(石巻市)

その後、門間代表のふるさと、東松島市の野蒜へ。驚いたことに、JR仙石線の線路や駅や踏切が痕跡さえもなくなっていました。門間さんもご実家を失われました。海岸の美しい松林はニューオーリンズのバイユーのごとく濁った沼沢地と化していました。しかしそこから蛙の声が!新しい命の力強さに嬉し涙が出ました。

東松島市野蒜。美しい松林が沼沢地に。

5日、仙台では8人の会員の方にお会いしました。「稲むらの火」のCD作成時にナレーションを担当したアナウンサーの高杉さんのお話し。「地震当日、海岸に近い宮城野区で新社屋オープンのためにセレモニーの司会をしていた。その社屋は1時間後に津波でなくなった」。

嬉しかったのは、八雲会が3月末の時点でお送りした義捐金の一部で門間代表はただちに洗濯機を購入し、会員がリ−ダーをつとめる石巻高校の避難所へ運び込む。312人分の洗濯にフル稼働したのです。石巻は次の復興段階に入ったため、現在、洗濯機は気仙沼の避難所で活躍しています。日本赤十字や行政に寄せられた義捐金はいまだプールされたままで生かされていません。

みちのく八雲会には、昨年、ハーンの神在月サミットに松江に集った各地の関連団体から支援の手が差し伸べられています。緩やかなネットワークが自然に形作られたのだと想像します。これもサミットの実践的な成果です。

「痩せたくても痩せられなかったのにみんな痩せちゃたね」でも、「きれいさっぱりなくなってすっきりした。ものを追い求める価値観は自然に消滅した」と、皆さんが仰います。ハーンが「極東の将来」で説いた、「生存最適者は自然と共生でき、シンプルライフを送れる人たち」という文言をあらためて重く受けとめ帰松しました。

最後に、被災地で強く感じた3つのことをお伝えします。津波から逃れるには、防潮堤を信頼しすぎることなく、高台にすみやかに徒歩で避難することが時を超えた鉄則だということ。だから「稲むらの火」は防災教材として今後も小学校で活用して欲しいと思います。つまり自然を支配しようとするのではなく畏怖する謙虚さを継承することが大切なのです。次に被災地への支援は自分のできることを無理なくする。できればピンポイントでNPO団体などと連絡を取り合えば必ず有効に生かされます。公的機関に寄せられた巨額の義捐金は6月上旬段階でまだ3割しか被災地に還元されていません。最後に、長い避難所生活から不安を訴える子供たちが増加傾向にあります。思いきりハグができるおとなが求められています。今こそ若者の出番です!

みちのく八雲会の会員の皆さんと。(仙台市)

(このリポートは「八雲会報」第48号にも掲載されています)

小泉八雲旧居が松江ツーリズム研究会の指定管理に 開館時間・入館料も変更

小泉八雲旧居の北側の庭

小泉八雲旧居(松江市北堀町)が、この4月からNPO法人松江ツーリズム研究会の指定管理となりました。

記念館&旧居「かわたれ通信」2011年4月7日付(小泉八雲記念館ホームページ)

小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は1891(明治24)年6月から熊本に転勤する11月まで、旧松江藩士・根岸家の屋敷を借りて暮らしました。その建物の一部が、小泉八雲旧居として現在一般に公開されています。八雲の「日本の庭 (“In a Japanese Garden”)」(『知られぬ日本の面影(日本瞥見記)(Glimpses of Unfamiliar Japan)』所収)に登場するのが、この家の庭です。

これまで旧居は根岸家代々の人びとによって管理されてきましたが、このほど松江市が旧居を借り受けた上で、NPO法人松江ツーリズム研究会が指定管理業務を担うこととなりました。松江ツーリズム研究会は、旧居に隣接する小泉八雲記念館(松江市奥谷町)をはじめ、松江城など松江市内の観光施設の指定管理業務に当たっているほか、八雲の「怪談」ゆかりの地をめぐる「松江ゴーストツアー」などのツアーを企画・実施しています。

小泉八雲旧居と小泉八雲記念館がともに松江ツーリズム研究会の指定管理下に置かれたことで、両施設の事業連携や一体的な運営、そして旅行企画との連動といった新たな展開が予想されます。両施設の今後に注目しましょう。

4月から旧居の開館時間と入館料も変更され、ともに小泉八雲記念館と同じ開館時間、同額の入館料となっています。特に4月から9月までの閉館時刻が延びましたので、夏は庭を見ながら縁側で夕涼みをするのにちょうどよいかも知れません。

夏の話は少し気が早いですが、ゴールデンウィークは目前です。松江方面にお出かけの際は、小泉八雲旧居にもお立ち寄り下さい。

小泉八雲旧居

公開時間

4〜9月:8:30-18:10受付終了
10〜3月:8:30-16:40受付終了

休日

無休

料金

大人300円
小人(小・中学生)150円

松江城・小泉八雲旧居・小泉八雲記念館・武家屋敷 共通入場券

大人1,160円
小人(小・中学生)580円
※このほか小泉八雲旧居・小泉八雲記念館のセット券もあり。

連絡先

松江市北堀町315
電話:0852-23-0714


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過去の雑誌記事で知る松江の魅力『松江特集』

松江観光協会編『松江特集』

Twitterでは折にふれてご紹介してきましたが、松江観光協会から『松江特集』という本が2月に発刊されました。この本は、全国や地方で過去に発売された雑誌に掲載された松江に関する特集記事5本を再録したもので、元『別册文藝春秋』編集長で、現在は松江観光協会の観光文化プロデューサーとして活躍する高橋一清さんが企画編集しました。

巻頭を飾るのは、戦後雑誌ジャーナリズムの歴史に名を刻む『暮しの手帖』第75号(1964年)より「水の町」。木造の黒瓦葺きの民家が立ち並び、行商のリヤカーや小さな汽船が行き交う、今日とは大きく異なる市街の情景を映し出す写真を添えて、高度経済成長期の昂揚感からやや距離を置いたかのような静謐な筆致で松江の姿が綴られています。「松江へ行くのなら、地図を一枚お持ちなさい。その地図をたよりに、なるたけ自分の足でお歩きなさい。まず千鳥城をみてから、濠端をぐるっと歩いてみる、気に入れば、そのへんの橋にもたれて休む、そんなふうに見てゆくと、しだいに、この町の、しずかで、つましく古風な美しさ、というものがしみとおってくる」。この記事書いた『暮しの手帖』初代編集長の花森安治は、旧制松江高校(現在の島根大学)を卒業した、松江ゆかりの名編集者です。

その花森安治が手がけた記事をガイドに、約40年後の松江を訪ねて書かれた記事が、『がんぼ』第9号(2005年)の「名編集者・花森安治が愛した 日本の原風景松江を歩く」です。高橋一清さんも記事中に登場して、花森安治と小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)との共通点を次のように指摘しています。「松江居住時の世代こそ違うけれど、神戸が、また日本の国が、失いかけているゆったりとした落ち着き、日本人ならではのたたずまい、それでいて新しいものを受け止めていく姿勢。彼らがそういったものを松江に見たのは確かでしょう。その後、ふたりともジャーナリストとして時代への批評、観察を行なっていきます」

『がんぼ』の記事中では、『暮しの手帖』記事の写真のうち、縁側でお茶を楽しむ人々の中に、松江市収入役や八雲会副会長を務めた漢東種一郎さんがいることを紹介しています。八雲会の長年にわたる会員には懐かしい名前です。

『西の旅』第17号(2008年)の「八雲でめぐる松江。」は、八雲の曾孫・小泉凡さん(島根県立大学短期大学部教授、八雲会名誉顧問)を案内役に、小泉八雲旧居、月照寺、神魂(かもす)神社など、松江市内の八雲ゆかり地を訪ねる記事です。八雲が好んだ味を再現した「ハーンの羊羹」(一力堂)の誕生秘話も登場しています。

その他、松江の古くからの商業地のガイドブック『白潟歴史と文化に出会える街歩きあんない』(2010年)と、市内に現存する古今の建築を特集した『湖都松江』第15号(2008年)の特集「未来に遺す『松江』」を採録。松江の旅案内やおみやげにもなりそうな1冊です。松江にお越しの際は、市内の書店や観光案内所などで手に取ってみて下さい。

社団法人松江観光協会編『松江特集』
社団法人松江観光協会刊
2011年
定価1,000円(税込)
お問い合わせ先:社団法人松江観光協会(電話0852-27-5843)
http://www.kankou-matsue.jp/

6月27日はヘルンさん160回目の誕生日です

明後日6月27日(日)は、ヘルンさんこと小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の160回目の誕生日です。

ヘルンさんは1850年6月27日、ギリシャのイオニア海に浮かぶレフカダ島で、英国籍アイルランド人の軍医と、ギリシャ人の母の間に生まれました。この年は日本の年号で言えば嘉永3年。浦賀にペリー率いる黒船が来航する3年前のことでした。

さて、明後日の誕生日当日は、小泉八雲旧居や小泉八雲記念館のある塩見縄手で、「小泉八雲生誕160年誕生祭」が開催されます。

ヘルンさんの胸像のある塩見縄手講演での記念式典とアトラクションのほか、塩見縄手一帯の商店や施設が、それぞれ趣向を凝らした特別企画を実施します。生誕160年にちなんで、160円の飲み物や食べ物を用意する店舗が多いようです。

小泉八雲記念館では、小泉凡さん(小泉八雲曾孫、小泉八雲記念館顧問)による解説が4回実施されます。また、何か「サプライズ」も用意しているとか……? 何でしょうね。

小泉八雲旧居では、朗読の催しのほか、この日限りで「芳名録」が復活し、来場者の記帳を受け付けます。

小泉八雲旧居(根岸家)の芳名録は、1916(大正3)年以来、旧居の訪問者が記帳してきたもので、全30冊中26冊が戦前の記録です。記帳者の中には、ヘルンさん二男の稲垣巌、教え子の大谷正信(繞石)や落合貞三郎といったヘルンさんゆかりの人びとから、芥川龍之介や湯川秀樹などの著名人の名前も見られます。八雲会では昨年(2009年)、この芳名録の全巻全ページを写真撮影し、デジタルデータによる記録保存を実施しました。また、デジタルデータをプリントアウトし、9分冊2セットをバインダー製本。そのうちに1部を根岸家に寄贈しました。

塩見縄手公園では、ヘルンさんへのメッセージカードを書けるとのこと。この際、旧居の芳名録と両方にあなたの名前を残してみるのも面白いでしょうね。

ヘルンさんのバースデイパーティ、楽しみに待ちましょう。

小泉八雲生誕160年誕生祭のイベントマップ。

参考
内田融「小泉八雲旧居(根岸家)の芳名録について」『八雲会報』第45号、2009年。
「松江の八雲会 ヘルン旧居芳名録を製本」『山陰中央新報』2009年11月1日。

『山陰中央新報』に旧居芳名録の記事:2009年11月〜12月

小泉八雲旧居(松江市北堀町)の訪問者が記帳した芳名録を八雲会が写真撮影・製本し、旧居所有者の根岸道子氏に贈呈しました。

2009年12月4日『山陰中央新報』
小泉八雲の「芳名録」 30冊に2万人の署名
内田融(八雲会常任理事)

[再掲]2009年11月1日『山陰中央新報』
松江の八雲会 ヘルン旧居芳名録を製本

『山陰中央新報』に掲載されました:2009年9月〜11月

9月から11月にかけて『山陰中央新報』に掲載された小泉八雲および八雲会関連の記事です。

2009年9月6日 『山陰中央新報』
松江で小泉八雲ゆかりの地をめぐるツアー
※琴ノ浦まちおこしの会(鳥取県琴浦町)のみなさんが「へるんツアー」で、加賀の潜戸などを訪問。八雲会の日野雅之副会長が解説を務めました。

2009年10月25日『山陰中央新報』
日野雅之著『松江の俳人 大谷繞石(ぎょうせき)』 復権願い業績つぶさに
風呂鞏(八雲会会員、比治山大学非常勤講師)
日野雅之副会長の新著の書評。同書は、島根県尋常中学校と東京帝国大学で八雲の教えを受けた大谷繞石(正信、1875-1933)の、俳人としての業績の再評価を試みています。

2009年11月1日『山陰中央新報』
松江の八雲会 ヘルン旧居芳名録を製本
※小泉八雲旧居(松江市北堀町)の訪問者が記帳した芳名録を八雲会が写真撮影・製本し、旧居所有者の根岸道子氏に贈呈しました。