
夏目漱石内坪井旧居(熊本市)
八雲会のFacebookページとTwitterアカウントでは、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)や松江に関する話題に混じって、夏目漱石についても時々取り上げています。これはいくつか理由があってのことです。
- 同時代に活動し、時期こそ重ならないものの、ともに現在の熊本大学と東京大学で英語や英文学を教えたこと。
- ともに現在の熊本市と東京都新宿区に居住し、特に熊本市にはハーンと漱石が暮らした家が現存し(ハーン1軒、漱石3軒)、一般公開されている建物があること(小泉八雲熊本旧居、夏目漱石内坪井旧居、外観のみ公開の夏目漱石第三旧居)。
- その上墓所まで一緒で、ふたりそろって雑司ヶ谷霊園(東京都豊島区)に眠っていること。
- 熊本近代文学館、熊本大学五高記念館、新宿歴史博物館には、いずれもハーンと漱石に関する常設展示があり、ゆかりの品々を収蔵していること。
- 中村青児さん(小泉八雲熊本旧居保存会会長)をはじめ、熊本のハーン顕彰関係者の中には、漱石の顕彰にも携わる方が少なくないこと。
そのようなわけで、漱石の話題を追いかけていると、ハーンに直接または間接的にかかわる話題に接することも珍しくありません。また、2016年の没後100年・来熊120年、2017年の生誕150年とつづく「夏目漱石記念年」に向けて、全国の漱石顕彰団体が連携して記念事業の動きを見せており、2010年の「ハーンの神在月:全国・小泉八雲の会&ミュージアムの未来を考えるサミット」以来活発となった、ハーン関係団体の連携にも参考となる事例が、これから多く蓄積されることを期待しています。そこで今日の八雲会ブログでは(八雲会なのに)漱石特集をお届けします。
【18:00追加】まずは漱石と熊本の縁についておさらいするのに便利、熊本県の広報動画を。
熊本県「プロジェクトSOSEKI」始動へ…新宿で「漱石・八雲」展も
夏目漱石記念年に向けて、熊本県が漱石と熊本との縁をPRする「プロジェクトSOSEKI」を始めるというニュースです。その一環として、夏には新宿歴史博物館で「熊本と新宿をつなぐ作家 漱石・八雲」展(仮称)の開催を予定しているとのこと。
『熊本日日新聞』によると、会期は「7月18日から8月30日まで」で、「改修・休館中の熊本近代文学館(熊本市)の漱石、八雲関係の資料展示のほか、熊本市、阿蘇市、玉名市、五高の各ブースも設ける」そうです。
“熊本の漱石”全国に 認知度アップへ県がPR−熊本のニュース│ くまにちコム
『朝日新聞』は「新宿区では、漱石が「三四郎」や「こころ」を書き上げた旧居の跡地に記念館を作る計画が進んでいるといい、そのための視察として、区職員が熊本近代文学館を訪れた。それがきっかけで企画の話が持ち上がったという」と展覧会の経緯にも触れています。
熊本)「漱石の縁」新宿区と熊本がコラボ 生誕150年:朝日新聞デジタル
同じく『朝日新聞』より、漱石と同じく東京大学の教員から転身した蒲島郁夫・熊本県知事のインタビュー記事。「結婚して子どもが生まれたのも熊本。この土地が漱石に与えた影響は大きい。熊本が「三四郎」「草枕」などの名作を生んだ。とても誇らしいですね」 インタビューのあとには、各地の漱石関連イベントの記事もたっぷり。
(漱石読むモン 熊本県×朝日新聞)三四郎・漱石の体験に共感 蒲島郁夫知事インタビュー:朝日新聞デジタル
その中で紹介されている熊本探訪ツアーの詳細。
夏目漱石、熊本探訪ツアー|ツアー詳細
保存なるか? 熊本の夏目漱石第6の旧居
このブログ記事の準備中に飛び込んできたニュースです。熊本では4年3か月の在住期間に6軒の借家を転々とした引っ越し魔だった漱石。公開されている上記2軒の旧居のほかに、最後の4か月を過ごした家も現存しているのですが、老朽化して空き家となっているこの建物について、熊本の漱石顕彰団体などが購入に向けた募金活動を検討していると報じられました。
漱石旧居の保存ピンチ 所有者が手放す意向
漱石の第6旧居、守れ 県内関係者ら保存運動へ−熊本のニュース│ くまにちコム
「民間から寄贈を受けた内坪井旧居などを管理する熊本市は「複数の旧居を維持管理するコストに見合う誘客効果があるのか不明」(松石龍太郎・文化振興課長)などとして、現時点では購入に慎重だ」(『読売新聞』)という一方、「(所有者の親族は)「文化的価値を認め、旧居として保存することを前提に」有償譲渡する意向を昨年、県文化協会(吉丸良治会長)、くまもと漱石倶楽部[くらぶ](和田正隆会長)に伝え」ており(『熊本日日新聞』)、「所有者側との橋渡し役を務めた中村青史元熊本大教授は「熊本ではこれまで吉田司家や中村汀女邸など大事なものが消えてしまった。今回は所有者側が協力的で、千載一遇のチャンス」と話している」(同)とのことです。
くまモン、漱石の命日にお墓参りとゆかりの地行脚
教職を辞したのち、朝日新聞社に入社して作家活動に専念した漱石。『朝日新聞』では昨年より「こころ」「三四郎」と漱石作品を相次いで“再連載”するなど、漱石のブロジェクトに注力していますが、熊本県宣伝部長のくまモンも協力。
「くまモン」とコラボ 漱石、熊本と深いつながり:朝日新聞デジタル
漱石が教壇に立った赤レンガの校舎、熊本大学五高記念館を訪問。
くまモン 三四郎ゆかりの「五高」訪問:朝日新聞デジタル
命日の12月9日には、五高の制服を来て東京でお墓参り。
漱石の命日、くまモンが墓参り ゆかりの出版社など訪問:朝日新聞デジタル
お墓参りのあとは、『こころ』刊行で出版事業を始めた岩波書店と、漱石の“後輩”たちを訪ねて朝日新聞社をハシゴ。
くまモン、漱石ゆかりの地で学ぶ 五高の制服・制帽姿:朝日新聞デジタル
こちらにはくまモンは出てきませんが、『朝日新聞』の連載「漱石を訪ねる」には、熊本のほか九州・山口の漱石とその作品ゆかりの地が紹介されています。
漱石を訪ねるに関するトピックス:朝日新聞デジタル
「草枕の道」を歩いてみよう
最後にご紹介するのは、熊本ゆかりの作品「草枕」の舞台を歩くウォーキングルート整備に向けて、熊本市が予算計上したというニュース。足に自信のある方、今後の動向に注目ですね。
「草枕」の舞台歩こう 熊本市がルート整備へ−熊本のニュース│ くまにちコム
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