120年前の夏、ハーンとセツは隠岐を訪問中
投稿:2012年08月11日(土)

隠岐郡海士町を中心に、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の隠岐来島120周年を記念するツアー、シンポジウム、展覧会が実施されたのは去る5月でしたが、ハーンとセツ夫人が隠岐に滞在したのは、1892(明治25)年の8月9日から24日にかけてのことでした。つまり、120年前のちょうど今が、隠岐来島120年のまさにそのときなのです。
松江から熊本の第五高等中学校(現在の熊本大学)に転任してから初めての夏休み、すでに7月から博多、神戸、京都、奈良をめぐる大旅行に出ていたハーンとセツは、8月9日に海路美保関(現在の島根県松江市美保関町)に到着。隠岐丸に乗船して翌10日、隠岐に上陸しました。
隠岐には4つの大きな有人島があり、東側にある最大の島を中心とする諸島を島後(どうご。現在の隠岐郡隠岐の島町)、西ノ島(同西ノ島町)・中ノ島(同海士町)・知夫里島(同知夫村)を中心とする西側の諸島を島前(どうぜん)といいます。平川祐弘監修『小泉八雲辞典』(恒文社、2000年)の「隠岐旅行」の項(銭本健二)によると、隠岐に旅程は以下のようなものでした。
- 8月10日 知夫里(隠岐郡知夫村)—浦郷(同西ノ島町)—菱浦(同海士町)—西郷(同隠岐の島町)滞在
- 8月17日 津井の池、玉若酢神社(同隠岐の島町)訪問
- 8月19日 菱浦滞在
- 8月20日 海士村(同海士町)に後鳥羽帝の御陵(火葬塚。のちに同地に隠岐神社が創建される)を訪問
- 8月22日 別府村(同西ノ島町)に後醍醐帝の黒木御所を訪問、浦郷に滞在
- 8月24日 浦郷より隠岐丸で境港(鳥取県境港市)へ
- 8月25日 美保関に滞在
※カッコ内は本記事の筆者による補足。市町村名は現在のもの
ハーンは隠岐の4つの有人島すべてをひと通り訪れたのち、西ノ島と中ノ島には再び上陸して島内を巡っています。隠岐旅行中、ハーンは、B. H. チェンバレンとともに『日本旅行案内(A Handbook for Travellers in Japan)』という英文の旅行ガイドブックを編集していたW. B. メイソンに詳細な報告を送り、その成果は同書の第4版(1894年)で、隠岐諸島の記事の参考とされました。ハーン自身も日本での第一作『知られぬ日本の面影(日本瞥見記/Glimpses of Unfamiliar Japan)』(1894年)に、「伯耆から隠岐へ(From Hoki to Oki)」という1章を収めました。
「伯耆から隠岐へ」は、以下の本で読むことができます。書店、図書館等で入手しやすいと思われるものを中心にご紹介します。
【日本語訳】小泉八雲著、平川祐弘編『明治日本の面影』(小泉八雲名作選集)講談社学術文庫
文庫版。「伯耆から隠岐へ」は銭本健二訳。
→amazon.co.jp
【日本語訳】小泉八雲作、平井呈一訳『日本瞥見記 下』恒文社
→amazon.co.jp
【英文】Lafcadio Hearn, Glimpses of Unfamiliar Japan, Tuttle Publishing.
ペーパーバック版。
→amazon.co.jp
【英文】Lafcadio Hearn, Glimpses of Unfamiliar Japan Second Series (Kindle Edition)
米国amazonの電子書籍リーダーKindle向けの電子書籍。Kindle向けの電子書籍は、専用の閲覧ソフトをインストールしたパソコン(Windows PC、Mac)やスマートフォン、タブレット端末でも閲覧可能。
→amazon.com
【英文】Lafcadio Hearn, Glimpses of Unfamiliar Japan (iBookstore)
iPhone、iPadなどのiOS対応のスマートフォン、タブレット端末で閲覧可能。
→amazon.com
【英文】A Guidebook for Travellers in the Province of the Gods—from Hearn’s writings— (revised and enlarged), The Hearn Society.
(銭本健二監修、井田徹/島根大学教育学部英語教育研究室英文学セミナー編『神々の国の旅案内—へるんとともに(増補改訂)』英語版、八雲会)
“From Hoki to Oki”より、”Sakaiminato” “Saigō” “Nishinoshima” “Hishiura and Ama”と題して抜粋。
→八雲会ホームページ
なお、Facebookページには、5月の隠岐来島120周年記念イベントの写真をアップロードしてあります。あわせてお楽しみください。
→小泉八雲隠岐来島120周年記念事業「小泉八雲のオープン・マインドと海士スピリッツ」
→ラフカディオ・ハーンとギリシャ:原風景と受け継がれる精神性
タグ: 伯耆から隠岐へ, 小泉セツ, 知られぬ日本の面影, 隠岐