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小泉八雲曾孫、小泉凡氏のメッセージ

文:小泉凡(小泉八雲曾孫、島根県立大学短期大学部教授、八雲会名誉顧問)

1987年に東京から松江に赴任して、二十余年がたちました。1980年代初頭に、成城大学で民俗学を学んでいた私は、出雲市大塚町がサークル活動のフィールドとなり、四季にわたって、数十回「神々の国」を訪問し、いつしか、曾祖父ハーンと同じように、この土地の大気の感触に魅了されていきました。それが、赴任のきかっけでした。

赴任前の院生時代に、M.K.マクネイルという人が書いた「アメリカの民俗学者・ラフカディオ・ハーン」という論文との出会いから、民俗学者としてのハーンに、遅まきながら関心をもつようになっていました。松江赴任後は、世界中から松江を訪ねてくださる多くの方との出会いに、この地に住んだことの有難さを痛感しています。そして思いがけない交流に発展したケースもありました。小泉八雲記念館で出会ったハワイの妖怪学者グレン・グラント氏から「アジア怪談会議」をハワイ大学で企画したからと講演者として招かれたり、ハーンを愛した故サミェル・フラー監督からはハーンの生涯の映画化の話をもちかけられました。また、昨年八月に他界した現代フィンランドを代表する音楽家で「怪談によるバラード」を生涯作曲し続けたノルドグレン氏、ハーンを讃える詩を持参して国賓として松江を訪れたメアリー・ロビンソン・アイルランド大統領など忘れられない方々との出会いもすでに重なっています。

ハーンの来日来松百年、没後百年などの記念行事、それに毎年のハーンの命日の前後に開催される青少年スピーチコンテストなど、いつも八雲会の皆さまとは、ハーンを研究・普及・活用する取り組みを一緒に行ってきました。そして、山陰地方の文化資源としてハーンを活用していくことの意義を感じています。八雲会は、決して閉鎖的な学会組織ではなく、業種や年齢を超えて、「ハーンにつながっていたい」と思う方々の緩やかな絆でつながれた、日本でも珍しいタイプの愛好者の組織です。気軽に入会して、得意分野で力を発揮していただければ、至福の喜びです。

小泉凡(こいずみ・ぼん):ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)直系の曾孫。島根県立大学短期大学部教授(民俗学)。八雲会名誉顧問。著書『民俗学者・小泉八雲』(恒文社、1995年)、『八雲の五十四年—松江からみた人と文学』(共著、松江今井書店、2003年)。

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