八雲会ブログ

ホーム » 八雲会ブログ

明日17日は八雲会定期総会と記念講演会、ご来場ください

いよいよ明日7月17日(日)13:00より松江市総合文化センター視聴覚室で、平成23年度八雲会定期総会記念講演会を開催します。

毎年総会には、地元松江を中心に、全国各地からも会員のみなさんが集まります。年に1度の再会を喜び合う姿も見られます。

総会議事終了後15:00からの記念講演会は、会員以外のみなさんとともに過ごすひとときでもあります。先月のNHKラジオ第二『私の日本語辞典』への出演が記憶に新しい池田雅之さんのお話を、ご一緒に楽しみましょう。

総会議事または講演会の前には、小泉八雲記念館で先月始まった「小泉八雲のKAIDAN展」、そして今年3月に開館した松江歴史館の小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)に関する展示をご覧になったり、『へるんさんの松江まちあるきマップ』を手に、改めて松江市内の八雲ゆかりの地を訪ねたりするのもおすすめです。

なお、ご来場の会員のみなさんには、年会費(普通会員3,000円、賛助会員一口5,000円)をお支払いいただきますので、ご協力をお願いします。また会誌『へるん』第48号をお配りしますので、どうぞお楽しみに。ご欠席の会員の方には後日郵送します。

それでは明日、松江市総合文化センターでお会いしましょう。

平成23年度八雲会定期総会
平成23年度八雲会定期総会記念講演会:池田雅之「小泉八雲と松江—『日本の面影』を旅する」

平成22年度総会の模様

平成22年度総会記念講演会の模様

6月27日は小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の誕生日です

小泉八雲旧居(根岸邸)

今日6月27日は、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の誕生日です。

昨日から今日にかけて、松江城の北堀に面して今も武家の屋敷の家並みをとどめる塩見縄手では、「へるんさんバースデー・アニバーサリー」と銘打って、小泉八雲旧居向かいの空き店舗では、津波に関する特別展示、八雲の曾孫・小泉凡さんが先月東日本大震災の被災地に「みちのく八雲会」の皆さんを訪問した際の写真のパネル展示、軽食やラフカディオ珈琲の販売が行われ、近隣商店や施設でもサプライズなサービスが実施されています。そして小泉八雲旧居に西隣、小泉八雲記念館では昨日から「小泉八雲のKAWAIDAN展:翻訳本と映画の世界」が始まりました。

小泉時、小泉凡共編『増補新版 文学アルバム小泉八雲』(恒文社、2008)によると、八雲は41歳の誕生日の5日前、1891(明治24)年6月22日に、塩見縄手の根岸邸に、生涯の伴侶となる小泉セツとともに転居しています。念願であった武家の屋敷での暮らしを始めたばかりの八雲は、どのような思いで41歳の誕生日を迎えたのでしょうか。根岸邸の一部は現在、小泉八雲旧居として一般に公開されています。

梅雨は鬱陶しい季節と思いたくもなりますが、八雲のこの家での暮らしぶりをしのぶには、絶好の季節が始まったと言えるのかも知れません。

震災後のみちのくで:八雲曾孫・小泉凡さんの東日本大震災被災地リポート

5月、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の曾孫・小泉凡さん(島根県立大学短期大学部教授、八雲会名誉顧問)が、東日本大震災の被災地を訪問、仙台を拠点に活動する「みちのく八雲会」(門間光紀代表)のみなさんと面会しました。小泉凡さんからお寄せいただいたリポートを、以下に掲載します。

震災後のみちのくで

文:小泉凡

5月の連休に、震災後はじめて仙台と石巻を訪ね、お見舞いの気持ちを込めて「みちのく八雲会」の皆さんと懇談してきました。同時に4月以降に八雲会に寄せられた義捐金と松江市在住の会員からご提供いただいた、和菓子とコーヒーを持参し、大いに喜んでいただきました。

石巻イオンで、みちのく八雲会の会員の皆さんと。左から2番目が小泉凡さん。(石巻市)

石巻イオンで、みちのく八雲会の会員の皆さん。(石巻市)

5月4日は石巻へ。被害の少なかった郊外のショッピングセンター・イオンに門間代表を含め8名の会員の方が参集してくださいました。そのうち6名までは家も車も失われています。壮絶な非難体験談をうかがいました。以下に抜粋して紹介します。

「地震当日、石巻線の陸橋の上で吹雪の中、娘と手をつないで一夜を明かした。通りかかった鮮魚トラックが中身を捨てて、発泡スチロールで囲いをつくり仮設トイレを作ってくれた。」「べそをかきながら、夫と山路を避難した。姉の嫁ぎ先をめざしたが、暗くなってきて、心細くなり、まるで曽根崎心中だった。通りかかった車に手をあげると若い青年で、どこまででも送ってくれると親切だった。でも彼はガソリンも食料もほとんどなかったので地震直後にコンビニで買ったおにぎりをあげた。親切なコンビニの店員はその5分後に津波で流されたはず。そのことを思い出すと悲しい。」「私は昭和23年3月11日生まれ。夜には誕生日を祝ってもらうことになっていた。だから3月11日は私にとってリセットの日。」「嫌いだった人が死んでこんなに悲しい。生き方を変えなければと思った。」「近くの学校の3階に避難した。窓にSOS 1600人と書いた。自衛隊のヘリが降りてくれた。3日間食べ物がなかったが、女子高校生がお金を出し合ってお菓子を差し入れしてくれた。嬉しかった」。

心温まる美談もありました。「転居届を提出したわけでもないのに、自宅あての郵便物が、避難先の実家に届けられた。近所の人に訊いて届けてくれたのだろう。日本人は何と勤勉で親切!」「行政はとりあえず犠牲者の遺体を土葬して、後日あらためて火葬することに決定。棺を10体並べてまとめて供養する予定だったたが、若いお坊さんたちが、『それはない!短くても一人ずつお経を!とネットワークをつくって行政に陳情し、個人供養を実現させた』」「イギリスの支援チームに、皇太子の結婚式で帰らなくていいのですかと尋ねると『被災地支援の方がずっと大切だ』といわれ涙が出た」「瓦礫から掘り出された遺体の中に、赤ちゃんを抱きしめたままのお母さんがいた」。

ハーンの大雄寺の子育て幽霊譚の再話には、時空を超えたtruth(真理)が本当にあったのだと感じました。その後、2名の会員の方のご案内で被害の大きかった南浜地区へ。瓦礫の中に立つ廃墟のような小学校は真っ黒にコンクリートが焦げていました。津波で流された何台かの車が学校の前でぶつかりあって炎上し、火災が発生したのです。そこに近い墓地では9割型の墓碑が倒れていました。でもそれを起こして地蔵やこけしが奉納される風景がありました。祖先信仰の強さを感じるとともに、ハーンが「地震と国民性」で説いたように、この国には不変の安住地はないということを思い知らされました。

南浜の小学校。津波でぶつかりあった車が炎上し、学校が焼ける。(石巻市)

南浜の墓地。こけしを奉納する光景。(石巻市)

その後、門間代表のふるさと、東松島市の野蒜へ。驚いたことに、JR仙石線の線路や駅や踏切が痕跡さえもなくなっていました。門間さんもご実家を失われました。海岸の美しい松林はニューオーリンズのバイユーのごとく濁った沼沢地と化していました。しかしそこから蛙の声が!新しい命の力強さに嬉し涙が出ました。

東松島市野蒜。美しい松林が沼沢地に。

5日、仙台では8人の会員の方にお会いしました。「稲むらの火」のCD作成時にナレーションを担当したアナウンサーの高杉さんのお話し。「地震当日、海岸に近い宮城野区で新社屋オープンのためにセレモニーの司会をしていた。その社屋は1時間後に津波でなくなった」。

嬉しかったのは、八雲会が3月末の時点でお送りした義捐金の一部で門間代表はただちに洗濯機を購入し、会員がリ−ダーをつとめる石巻高校の避難所へ運び込む。312人分の洗濯にフル稼働したのです。石巻は次の復興段階に入ったため、現在、洗濯機は気仙沼の避難所で活躍しています。日本赤十字や行政に寄せられた義捐金はいまだプールされたままで生かされていません。

みちのく八雲会には、昨年、ハーンの神在月サミットに松江に集った各地の関連団体から支援の手が差し伸べられています。緩やかなネットワークが自然に形作られたのだと想像します。これもサミットの実践的な成果です。

「痩せたくても痩せられなかったのにみんな痩せちゃたね」でも、「きれいさっぱりなくなってすっきりした。ものを追い求める価値観は自然に消滅した」と、皆さんが仰います。ハーンが「極東の将来」で説いた、「生存最適者は自然と共生でき、シンプルライフを送れる人たち」という文言をあらためて重く受けとめ帰松しました。

最後に、被災地で強く感じた3つのことをお伝えします。津波から逃れるには、防潮堤を信頼しすぎることなく、高台にすみやかに徒歩で避難することが時を超えた鉄則だということ。だから「稲むらの火」は防災教材として今後も小学校で活用して欲しいと思います。つまり自然を支配しようとするのではなく畏怖する謙虚さを継承することが大切なのです。次に被災地への支援は自分のできることを無理なくする。できればピンポイントでNPO団体などと連絡を取り合えば必ず有効に生かされます。公的機関に寄せられた巨額の義捐金は6月上旬段階でまだ3割しか被災地に還元されていません。最後に、長い避難所生活から不安を訴える子供たちが増加傾向にあります。思いきりハグができるおとなが求められています。今こそ若者の出番です!

みちのく八雲会の会員の皆さんと。(仙台市)

(このリポートは「八雲会報」第48号にも掲載されています)

津波に関する特別展示が「へるんさんバースデー・アニバーサリー」に帰ってきます

東日本大震災を受けて小泉八雲記念館で実施されていた津波に関する特別展示は、6月26日(日)に始まる「小泉八雲のKWAIDAN展」への展示替えのため先ごろ終了しましたが、26日(日)27日(月)に、会場を移して2日間に限り帰ってきます。

これは、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の誕生日(6月27日)を祝って両日にわたって塩見縄手(小泉八雲旧居、小泉八雲記念館周辺)で開催される「へるんさんバースデー・アニバーサリー」の一環です。会場は、今年のゴールデンウィークに臨時の無料休憩所が開設された、小泉八雲旧居向かいの空き店舗です。

八雲がtsunami(津波)という言葉を世界に紹介したことを、この機会にぜひ知っていただけたらと思います。どうぞお出かけください。

へるんさんバースデー・アニバーサリー
小泉八雲記念館の津波に関する特別展示について、小泉凡氏のメッセージと展示品リスト

八雲会総会講演会の講師・池田雅之さん出演中 NHKラジオ第二『私の日本語辞典』

7月17日(水)の八雲会定期総会の記念講演会には、講師に早稲田大学教授の池田雅之さん(比較文学)をお招きしますが、現在NHKラジオ第二の『私の日本語辞典』という番組に、4週にわたって池田さんが出演中です。

小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)その人の人物像や作品を形成する文化的な背景や、八雲作品の訳書を多く手がけた池田さんの翻訳にまつわるエピソードなど、八雲作品や池田さんの著書を読む上でも興味深い話が多く登場しています。

すでに第1回と第2回は本放送・再放送とも終了しましたが、第3回の再放送と最終回の本放送が25日(土)、最終回の再放送が7月2日(土)に予定されています。今からでもぜひチェックしてみてください。

NHKラジオ第二『私の日本語辞典』池田雅之「異文化交流にみる日本語の姿」(全国)
平成23年度八雲会定期総会記念講演会:池田雅之「小泉八雲と松江—『日本の面影』を旅する」

新刊『ラフカディオ・ハーンの英作文教育』

『ラフカディオ・ハーンの英作文教育』表紙

アラン・ローゼンさん(熊本大学教授)と西川盛雄さん(熊本大学名誉教授・客員教授)の共著『ラフカディオ・ハーンの英作文教育』が刊行され、先ごろ著者より八雲会にご寄贈いただきました。

本書は、松江の島根県尋常中学校でラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の授業を受けた田辺勝太郎(1872-1931)と大谷正信(繞石/1875-1933)の英作文のノートを復元・判読した1冊です。本書見開きの左ページにはハーンによる添削とコメントが記されたノートの写真版を、右ページには判読・復元したテクストとその日本語訳を配しています。この英作文ノートはガラス乾板として保存されており、ハーンの勤務校のひとつである熊本の第五高等学校(現在の熊本大学)出身の劇作家・木下順二(1914-2000)を介して熊本県立図書館に収蔵され、2004(平成16)年なってその存在が明らかになりました。

『ラフカディオ・ハーンの英作文教育』本文

ハーンは生徒のノートに、英文の訂正や誤りの指摘を丁寧に記するほか、しばしば生徒を励ますコメントも加えています。また、日本人の文化や生活に深い関心を寄せていたハーンにとって、「ホトトギス」「蛍」「七福神」「相撲」といったテーマで学生が書いた英作文は、日本理解の格好の材料であり、ハーンのコメントには彼が知り得た限りの知識が書き込まれたものもあります。

ハーンが松江や熊本での教師生活の体験をもとに著した「英語教師の日記から(”From the diary of an English Teacher”)」(『知られぬ日本の面影(日本瞥見記)』 Glimpses of Unfamiliar Japan 所収)や「九州の学生とともに(”With Kyushu Students”)」(『東の国から』 Out of the East 所収)には、生徒が提出した英作文を通じたさまざまな考察がつづられていますが、英作文のノートを介して直筆で交わされた師弟のコミュニケーションの跡を集めた本書は、英語教師としてのハーンの実像に迫ることのできる、資料性の高い1冊です。

※本書は2010年に50部限定で刊行された『ラフカディオ・ハーンの英作文添削:判読・復元・日本語訳』(熊本大学学術資料調査推進室)の新装版に当たります。判型を改め、巻末に「ハーンによる英作文添削の分類と分析」と題する一章が加わっています。

ラフカディオ・ハーンの英作文教育
アラン・ローゼン 西川 盛雄
弦書房
売り上げランキング: 74296

新刊『ニューオーリンズとラフカディオ・ハーン』

『ニューオーリンズとラフカディオ・ハーン:「死者たちの町」が生む文化混淆の想像力』

島根大学附属図書館ハーン図書出版編集委員会編『ニューオーリンズとラフカディオ・ハーン:「死者たちの町」が生む文化混淆の想像力』が3月に刊行されました。八雲会の会員も多数、執筆・編集に携わっています。

本書は、アメリカでジャーナリストとして活躍していたころのラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をテーマに、2009年に松江市立中央図書館、島根県立図書館、島根大学附属図書館が共同開催した展覧会とシンポジウム「アメリカのラフカディオ」の成果を基礎に、ニューオーリンズ時代のハーンに重点を置いて出版化したものです。テーマにふさわしく、本文書体には日本語の新聞に用いられる平べったい明朝体やゴシック体が使われています。

ハーンに関する論考のほかに、ハーンがThe Daily City Item紙に掲載した挿絵入りの新聞記事のうち30本の日本語訳が、「ニューオーリンズ」「音楽」「近代化」「社会問題」という4つのジャンルに分類・収録されています。「手回しオルガン弾き」「市民からの挿絵入りの手紙」「アイルランド人地区寸描」などの見出しが並び、中には「化け物たち」「ペリカンの幽霊」といった一見不思議なものも散見します。ジャーナリストとしてのハーンの姿に接し、19世紀末のニューオーリンズの空気を感じ取ることができるページです。

本書は現在、松江・出雲市内では主な書店の店頭で手にとることができます。八雲会でも販売していますので、この機会にぜひお買い求めください。

本書の概要は下記リンク先でご覧ください。

『ニューオーリンズとラフカディオ・ハーン:「死者たちの町」が生む文化混淆の想像力』

小泉八雲旧居が松江ツーリズム研究会の指定管理に 開館時間・入館料も変更

小泉八雲旧居の北側の庭

小泉八雲旧居(松江市北堀町)が、この4月からNPO法人松江ツーリズム研究会の指定管理となりました。

記念館&旧居「かわたれ通信」2011年4月7日付(小泉八雲記念館ホームページ)

小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は1891(明治24)年6月から熊本に転勤する11月まで、旧松江藩士・根岸家の屋敷を借りて暮らしました。その建物の一部が、小泉八雲旧居として現在一般に公開されています。八雲の「日本の庭 (“In a Japanese Garden”)」(『知られぬ日本の面影(日本瞥見記)(Glimpses of Unfamiliar Japan)』所収)に登場するのが、この家の庭です。

これまで旧居は根岸家代々の人びとによって管理されてきましたが、このほど松江市が旧居を借り受けた上で、NPO法人松江ツーリズム研究会が指定管理業務を担うこととなりました。松江ツーリズム研究会は、旧居に隣接する小泉八雲記念館(松江市奥谷町)をはじめ、松江城など松江市内の観光施設の指定管理業務に当たっているほか、八雲の「怪談」ゆかりの地をめぐる「松江ゴーストツアー」などのツアーを企画・実施しています。

小泉八雲旧居と小泉八雲記念館がともに松江ツーリズム研究会の指定管理下に置かれたことで、両施設の事業連携や一体的な運営、そして旅行企画との連動といった新たな展開が予想されます。両施設の今後に注目しましょう。

4月から旧居の開館時間と入館料も変更され、ともに小泉八雲記念館と同じ開館時間、同額の入館料となっています。特に4月から9月までの閉館時刻が延びましたので、夏は庭を見ながら縁側で夕涼みをするのにちょうどよいかも知れません。

夏の話は少し気が早いですが、ゴールデンウィークは目前です。松江方面にお出かけの際は、小泉八雲旧居にもお立ち寄り下さい。

小泉八雲旧居

公開時間

4〜9月:8:30-18:10受付終了
10〜3月:8:30-16:40受付終了

休日

無休

料金

大人300円
小人(小・中学生)150円

松江城・小泉八雲旧居・小泉八雲記念館・武家屋敷 共通入場券

大人1,160円
小人(小・中学生)580円
※このほか小泉八雲旧居・小泉八雲記念館のセット券もあり。

連絡先

松江市北堀町315
電話:0852-23-0714


大きな地図で見る

過去の雑誌記事で知る松江の魅力『松江特集』

松江観光協会編『松江特集』

Twitterでは折にふれてご紹介してきましたが、松江観光協会から『松江特集』という本が2月に発刊されました。この本は、全国や地方で過去に発売された雑誌に掲載された松江に関する特集記事5本を再録したもので、元『別册文藝春秋』編集長で、現在は松江観光協会の観光文化プロデューサーとして活躍する高橋一清さんが企画編集しました。

巻頭を飾るのは、戦後雑誌ジャーナリズムの歴史に名を刻む『暮しの手帖』第75号(1964年)より「水の町」。木造の黒瓦葺きの民家が立ち並び、行商のリヤカーや小さな汽船が行き交う、今日とは大きく異なる市街の情景を映し出す写真を添えて、高度経済成長期の昂揚感からやや距離を置いたかのような静謐な筆致で松江の姿が綴られています。「松江へ行くのなら、地図を一枚お持ちなさい。その地図をたよりに、なるたけ自分の足でお歩きなさい。まず千鳥城をみてから、濠端をぐるっと歩いてみる、気に入れば、そのへんの橋にもたれて休む、そんなふうに見てゆくと、しだいに、この町の、しずかで、つましく古風な美しさ、というものがしみとおってくる」。この記事書いた『暮しの手帖』初代編集長の花森安治は、旧制松江高校(現在の島根大学)を卒業した、松江ゆかりの名編集者です。

その花森安治が手がけた記事をガイドに、約40年後の松江を訪ねて書かれた記事が、『がんぼ』第9号(2005年)の「名編集者・花森安治が愛した 日本の原風景松江を歩く」です。高橋一清さんも記事中に登場して、花森安治と小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)との共通点を次のように指摘しています。「松江居住時の世代こそ違うけれど、神戸が、また日本の国が、失いかけているゆったりとした落ち着き、日本人ならではのたたずまい、それでいて新しいものを受け止めていく姿勢。彼らがそういったものを松江に見たのは確かでしょう。その後、ふたりともジャーナリストとして時代への批評、観察を行なっていきます」

『がんぼ』の記事中では、『暮しの手帖』記事の写真のうち、縁側でお茶を楽しむ人々の中に、松江市収入役や八雲会副会長を務めた漢東種一郎さんがいることを紹介しています。八雲会の長年にわたる会員には懐かしい名前です。

『西の旅』第17号(2008年)の「八雲でめぐる松江。」は、八雲の曾孫・小泉凡さん(島根県立大学短期大学部教授、八雲会名誉顧問)を案内役に、小泉八雲旧居、月照寺、神魂(かもす)神社など、松江市内の八雲ゆかり地を訪ねる記事です。八雲が好んだ味を再現した「ハーンの羊羹」(一力堂)の誕生秘話も登場しています。

その他、松江の古くからの商業地のガイドブック『白潟歴史と文化に出会える街歩きあんない』(2010年)と、市内に現存する古今の建築を特集した『湖都松江』第15号(2008年)の特集「未来に遺す『松江』」を採録。松江の旅案内やおみやげにもなりそうな1冊です。松江にお越しの際は、市内の書店や観光案内所などで手に取ってみて下さい。

社団法人松江観光協会編『松江特集』
社団法人松江観光協会刊
2011年
定価1,000円(税込)
お問い合わせ先:社団法人松江観光協会(電話0852-27-5843)
http://www.kankou-matsue.jp/

松江歴史館に小泉八雲の常設展示「八雲の愛した松江の世界」

松江城東側から臨む松江歴史館

3月19日、城下町松江の歴史を知ることができる博物館・松江歴史館が開館しました。かつて家老屋敷があった敷地にふさわしく、広大な敷地に大規模な武家屋敷風の建物が、松江城を囲む堀の東側に面してたたずんでいます。館内には靴を脱いで上がり、畳敷きの廊下を進みます。

松江歴史館の展示内容は江戸時代の松江に関するものが中心ですが、明治時代に入ってもなお、伝統的な文化を色濃く伝えていた松江を紹介する手がかりとして、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)を取り上げた常設展示「八雲の愛した松江の世界」が用意されています。

プラネタリウムの客席を思わせる、傾斜のゆるやかな背もたれを持つソファに腰かけて天井を眺めると、円形のスクリーンには明治以降の松江を映した写真が交互に現れます。八雲の松江滞在中の1891(明治24)年に架け替えられた西洋風の欄干を持つ松江大橋、舗装されていない街路に着物姿で行き交う人々……今とは大きく異なる松江の姿と、今も変わらない松江の風情が交じり合います。

背もたれの傾斜が直角に近い別のソファに席を移すと、「神々の国の首都 (The Chief City of the Province of the Gods)」「美保関にて (At Mionoseki)」など松江に取材した八雲の作品を味わうブースが設けられています。作品の日本語訳とイラストが映し出されるモニターを見ながら、朗読を聴くことができます。

小泉八雲記念館、小泉八雲旧居に続いて、松江城の堀端に八雲に関する展示の場が、またひとつ加わりました。松江に八雲の面影を訪ねるならば、ぜひ立ち寄りたい場所です。

松江歴史館 ※基本展示の「松江の息づかい」の一部として「八雲の愛した松江の世界」が紹介されています。
『市報松江』2011年2月号 ※表紙写真が「八雲の愛した松江の世界」のコーナーです。


%d人のブロガーが「いいね」をつけました。