階段を昇りつめた所は、広い縁(えん)になっていて、その奥行きいっぱいに間口を広げる、広くて天井の高い部屋へと、私たちは案内される。神官についていきながら、その部屋の両側の壁を穿(うが)つような形で、計三つのご神座があることにかろうじて気づいた。そのうちふたつのご神座には,天井から畳の床まで白い幕が掛かっている。その幕には、直径十センチメートルほどの黒い丸の真ん中に金色の花の紋が、縦縞(たてじま)のようにあしらってある。 「杵築(きづき)—日本最古の神社(Kitzuki: The Most Ancient Shrine of Japan)」より(池田雅之訳『新編 日本の面影』角川文庫版)
日本での第一作『知られぬ日本の面影(Glimpses of Unfamiliar Japan)』所収の「杵築—日本最古の神社(Kitzuki: The Most Ancient Shrine of Japan)」は初めての大社参拝の体験を、同「杵築雑記(Notes on Kitzuki)」「日御碕(Hinomisaki)」は1891年の大社訪問をもとに書かれた作品です。出雲大社に例年にも増して注目の集まるであろう2013年、この機会に八雲の大社ゆかりの作品と、大社に残した足跡にも触れていただければ幸いです。八雲会のホームページ、Twitter、Facebookページなどでも、折に触れてご紹介できたらと思います。